　加ト吉　本社工場見学記
　　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　
◆太平洋戦争で父親を亡くし、中学三年生の時には頼みの綱の祖父が脳卒中で倒れ、高校進学を断念して十五歳にして、いりこ、干しえびの加工販売の家業を継ぎ、漁獲シ－ズンオフには遊んじゃいられないとばかりに、ちくわ、かまぼこ、の行商に精いを出し働き続けて五年後の昭和三十一年、弱冠二十歳にして資本金二〇〇万円で海産物問屋の「加ト吉水産」を設立し、現在、年商二五〇〇億円を越す「加ト吉」グル－プを形成し、そのリ－ダ－として今尚、未来に向かって新たな大きな夢に挑戦を挑み、躍進を開始しているのが「加ト吉」加藤義和オ－ナ－です。　

◆この「加ト吉」の本社工場見学を昨年の十一月末、東証ペンクラブの代表三十一名が訪問し、常に明日を考え情熱と努力でチャレンジ、行動を展開し不況と言われる日本経済を跳ね飛ばして発展している企業と、その経営者の姿が目に焼き付き、不況風吹き捲る悲観のドン底にあえぐ多くの人々の為に希望と夢を与える事が出来れば幸いと思い筆を取った次第です。

◆現在の「加ト吉」は、平成八年創業四十周年を期に今新たな調理加工食品分野への“台所革命”を全面に掲げ四兆円規模の米飯市場に一大旋風を巻き起こすべく“炊飯器が消える日が来る”と冷凍加工米飯に力を入れ、既に平成六年九月に日本一お米が美味しいと言われる新潟県魚沼工場を完成させ、コシヒカリ一〇〇％の新製品「冷凍米飯」を核として主食市場への進出を計り、八年九月に精米から加工までの一貫生産体制の魚沼第二工場も新設させる一方、中国、インドネシア、タイ、などでの生産拠点づくりによる価額革命への対応で準備は完了、再び更に大きく飛躍する可能性の道が開かれて来たのです。

◆「加ト吉」の第一段階の飛躍発展は冷凍食品業界の一角に食い込んだ起爆剤「冷凍えびフライ」の開発によってライバルメ－カ－を一挙に引き離した事から不動の地位を築き、続いてかきフライ、冷凍コロッケなど学校給食、工場給食向けは簡単で便利で美味しいと飛ぶように売れ、脅威的な業績向上を伸ばし続づけて来たのです。売上げを見ればいかに凄いか判る筈です。

◆　　昭和三八年、　　一億七三〇〇万円。
　　　　　三九年、　　三億二七〇〇万円。
　　　　　四〇年、　　五億五八〇〇万円。　
　　　　　四一年、　　九億二〇〇〇万円。
　　　　　四四年、　二一億四六〇〇万円。
　　　　　四五年、　三二億三九〇〇万円。
　　　　　四七年、　七八億五八〇〇万円。
　　　　　四八年、一二二億八〇〇〇万円。
　　　　　五〇年、二五〇億二二〇〇万円。
　　　　　五二年、三八二億四一〇〇万円。
　　　　　五三年、四三九億八五〇〇万円。
　　　　　五四年、五九〇億五八〇〇万円。

◆笑いの止まらぬ販売増進、当たりに当たった冷凍食品。テレビコマ－シャルでお馴染みの「カトキッちゃんソング」がこの頃に登場し、今だに廃らぬ人気は商品その物の人気に顕われているのです。当社の開発商品は発売以来見事な伸長を呈しただけでなく、調理人不足が深刻化する中での人手半減にも寄与して喜ばれ、生産性も上昇一途美味しさを加えて、まさに一石三鳥、時代のニ－ズを充分に満足させての発展で、経営基盤を完全に不動のものとして確立させたのです。

◆一方では　“食を楽しむ”為の居酒屋、ホテル、カラオケなどにも進出し加ト吉グル－プを一層力強く支援し経営戦略の援護の役割りを果たしてもいるのです。加藤オ－ナ－は昭和五〇年から四期十六年間にわたり観音寺市長と言う政治の世界と経営者の二足のわらじを履きながら市長の仕事と企業の仕事にはきっちりケジメをつけ立派に両立させ支持を受け時の大平首相の信頼も得て瀬戸大橋完成の土台を築き、下水道整備を進め、都市基盤の整備充実、行財政に占める人件費の削減など郷土市民奉仕に勤め、香川県の再開発構想・広域圏都市づくりを訴え続け「貢献」を信条に政治と企業と生活意識革命にまい進し、市長の椅子を後任に譲った後、企業発展に全神経を傾注し指揮を取っているのです。

◆冒頭に述べたイガグリ小僧が行商を始め、二〇歳にして二〇〇万円の会社を起こし、現在資本金三四〇億円。来期売上予想一六五〇億円、冷凍食品専業の大手に成長した背景には常に謙虚な姿勢で笑顔を絶やさず妥協を許さず先を見詰めて、時代の変化にチャレンジする激しい闘争心を内に秘めて、でっかいスケ－ルで物事を考え、実行に映す行動派で業務提携やＭ＆Ａも鮮やかに実践する度胸と勝負強さを持ち合わせた素晴らしい男なのです。

◆一昨年、創業四〇周年を出発点として卸しの段階で四兆円産業のお米めごはんは魚沼産のコシヒカリ、炊き立てご飯のパックをそのまま電子レンで「チン」すればホッカホカのご飯の出来上がり、美味しさは抜群、人気は急上昇中で、その他、ご飯シリ－ズは「料理の鉄人」中村孝明の味で仕上げた本格派の味で帰宅後に試食して見ましたがおいし過ぎて「ホッペタが落ちそうな味」一層食欲をそそらしてくれたのです。皆様も是非試食して見て下さい。お薦めします。

◆見学後に出された本場の冷凍さぬきうどんも文句なしの美味さ言うこと無しスゴイです。北海道富良野産の男爵いもを使用したコロッケは帰宅後食べて見ましたが思わずよだれをゴックンする程のおいしさでした。
現在の新販売商品は八〇種類を越しどれもが素晴らしいものばかりで筆者は完全に虜になって、これから総ての商品の試し食いをしてやろうと決意してしまいました。

◆食べ物だけはいかなる不況がこようとも食べぬ訳にはいかず、それが安くて手間が掛からず美味しいとなれば売れるのは当然。その軌道をまっしぐらにつき進んでいるのが「加ト吉」であるとの感触を受けて参りました。それにつけてもいかに企業の発展の根底には自信溢れた経営者の野望にも似たどん欲な意識革命に対する挑戦意欲と行動力が競争に打ち勝ち成長し、今後も伸び続けるとの加藤オ－ナ－の話しを聞きながら感銘を強くして来た者でご座居ます。

◆三〇年前にえびフライで名を轟かせ二〇年前にはコロッケで大ヒットをさせ、その名と業績を挙げた加ト吉オ－ナ－の理念は並の人と違う！創造・努力・夢とロマンとチャレンジ精神・危機意識・変化・誠実・勇気・愛・出会い・すべての言葉に真実がほとばしっていた事です。

◆駐車場のスペ－ス一つを見てはっきり判ったのです。従業員数より多いスペ－スの駐車場が取ってあり、マイカ－通勤奨励、通勤時間の短縮、その分労働力にと無駄な労力削減を計る労働体制、そこに加ト吉の原点を見た思いでした。いかに無駄を省き効率労働を取り入れている会社か、結果は無借金企業に君臨し業績も史上最高益を更新つづけている事を見れば一目瞭然です。既に発表されている自社株三〇〇万株の株式償却買い入れ決定こそ株主に対する姿勢と将来の加ト吉の姿が映し出されているのです。本当に四兆円産業のコメ市場に食い込み「ご飯の加ト吉」になる日は近い！更に大成長する！この確信をこの目で見て深めて来た有意義な本社工場見学でした。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ナショナル証券　投資営業部　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東証外務員協会　　　理　事　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　丸山三代次　　　　